週刊ラグドールラグドールは可愛いのか? 特別号

2026年9月25日発行 第1号定価:のびしろ

検証

【検証】ぬいぐるみ、抱っこを拒否。ラグドールは名前負けなのか

2026年9月25日・週刊ラグドール取材班

ラグドール。英語で「ぬいぐるみ」。抱き上げるとくたっと力が抜ける猫、と聞いて迎えた。抱き上げた。後ろ足で腕を蹴られ、秒で床に逃げられた。ぬいぐるみに拒否された人間の気持ちを考えたことがあるだろうか。

ウワサ

ネットでは「ぬいぐるみ詐欺」「名前負け」がおなじみのネタだ。「うちのラグドール、抱っこさせてくれない」「ぬいぐるみなのは見た目だけ」という飼い主の嘆きが定期的に流れてくる。

困ったことに、ここから「ラグドールって実は性格悪いの?」という検索にまで話が飛ぶ。飼い主向けのブログでも、抱っこ嫌いの子は珍しくなく、名前のイメージとのギャップが誤解を生んでいる、とまとめられている。

一方で「抱っこすると本当にだらーんとなる」という投稿も同じくらいある。どっちなんだ。

取材班が調べた

名前の由来は「創始者がそう言っていた」

CFAの品種紹介によると、この品種を作ったアン・ベイカーさんは、始まりの猫ジョセフィンについて「とても穏やかで、抱くと力が抜けた」と主張していた。それが名前の由来だ。

そして同じページに、ここが大事なのだが、その特徴は今のラグドールの多くには当てはまらないとはっきり書いてある。名前が先に有名になりすぎただけで、「全員抱っこでとろける」は公式にも保証されていないのである。

ちなみに誕生のいきさつには、ほかにもかなり怪しい話がくっついている。それは誕生秘話がカオスすぎるで検証した。

基準は「扱いやすい」を目指している、が

イギリスのGCCFの品種の基準には、気質はリラックスしていて、穏やかで、扱いやすいのが望ましい、という一文がある。つまり繁殖の目標としては「抱っこしやすい猫」が理想とされている。

ただし基準は「こうあってほしい理想像」であって、生まれてくる全員の性格を決めるものではない。

研究でも「平均」と「個体」は別

フィンランドのヘルシンキ大学のチームが、約5,700匹の猫について飼い主アンケートを集めた研究(2019年)では、ラグドールは攻撃性やこわがりの度合いが低めのグループに入った。一方で、行動の特徴のうち遺伝で説明できるのは半分弱ほどと見積もられている。

裏を返すと、残りの半分以上は育ち方や環境、その子自身の個性ということになる。品種の平均がどうであれ、目の前のその子が抱っこを好きかどうかは、別の話なのだ。

そもそも猫は「抱っこ」があまり得意じゃない

猫全体の話として、国際的な猫医療の団体(AAFP/ISFM)の指針は、体全体を押さえ込むような扱いは猫をこわがらせやすいので避けるべきとしている。猫は自分から近づいたときのほうが、人と長く触れ合う傾向がある、とも書かれている。

なでられる場所の研究もある。猫は顔まわり(ほお・あご・目と耳の間)をなでられるのを好み、しっぽに近いところは嫌がる反応が多かった。

しかもこの研究、飼い主より初対面の実験者になでられたときのほうが、猫の反応が好意的だったという、飼い主には聞かせたくない結果まで出ている。研究者は、猫は自分のタイミングで触れ合いたいのに、飼い主はつい好きなときに触りにいくからでは、と考えている。心当たりしかない。さらに、子猫の生後2〜9週ごろの経験が、その後の性格に大きく影響するとされている。

つまり抱っこは、猫にとっては「持ち上げられて、動けなくされる」行為だ。ぬいぐるみだろうとなんだろうと、嫌な子は嫌なのである。

よくある場面 猫側の事情(目安)
抱き上げた瞬間に暴れる 足が浮いて不安定なのが嫌
数秒はOK、すぐ降りたがる 短時間ならガマンできるタイプ
自分から膝には乗る 触れ合いは好き、主導権がほしい
急に抱っこを嫌がるようになった どこか痛いなど体調のサインのことも
抱っこでだらーんとなる 名前どおりの当たりの子

判定

判定:個体差。抱っこでとろける子もいるし、全力で拒否する子も普通にいる。名前は約束ではなく、創始者の猫のエピソードが残っているだけだ。

抱っこを嫌がるからといって、性格が悪いわけでも、ラグドールとして失格なわけでもない。人間だって、急に持ち上げられたら普通に嫌だ。名前負けというより、名前が勝手に大きく言いすぎた、が正しい。とろける派も断固拒否派も、猫である時点でもう優勝している。

飼い主向けメモ

  • 抱くときは、胸の下とおしり・後ろ足をしっかり支える。足がぶらぶらすると不安になりやすい
  • 抱っこは数秒から。嫌がる前に降ろして、ごほうびで終わらせる
  • こちらから追いかけて抱くより、猫が寄ってきたタイミングを狙う。自分で選べる猫のほうが、触れ合いが長続きしやすい
  • 抱っこにこだわらず、膝に乗る・隣で寝る・あとをついてくるのも立派なスキンシップ。ついて来る件はトイレまでついて来るで検証した
  • なでるなら顔まわりから。しっぽの付け根付近は嫌がる子が多い
  • 前は平気だったのに急に嫌がる、触ると怒る場所がある、動きがぎこちない、というときは痛みが隠れていることもあるので、動物病院に相談する

ぬいぐるみに抱っこを断られたら、それはもうぬいぐるみではなく、意思のある同居人だ。家賃は払わない。

取材班が見た資料

※性格や体の特徴には個体差があります。健康について気になるときは、動物病院に相談してください。

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