週刊ラグドールラグドールは可愛いのか? 特別号

2026年9月25日発行 第1号定価:のびしろ

検証

【検証】ラグドール子猫詐欺事件:白い子猫は、なぜ顔が黒くなるのか

2026年9月25日・週刊ラグドール取材班

真っ白でふわふわの子猫を迎えた。数年後、そこにいたのは顔と耳としっぽが焦げ茶色の、でかい猫だった。取材班はこれを「ラグドール子猫詐欺事件」と名付け、犯人を追った。

ウワサ

Xでは、子猫時代と今の写真を並べる「ビフォーアフター」がラグドール界の定番ネタになっている。「白い毛玉を買ったはずが、トーストになって返ってきた」「同じ猫とは思えない」といった声がつき、何万回も表示される。

ニュースにもなっている。たとえばソファにちょこんと乗っていた子猫が、貫禄のある大きな猫に育った成長記録は、ライブドアニュースでも紹介された(ライブドアニュースの記事)。コメント欄の反応はだいたい「同じ猫!?」である。

つまり容疑はふたつ。色が変わった、そしてサイズが変わった。今回は色のほうを追う。

取材班が調べた

犯人は「温度で動く遺伝子」

ラグドールは全員、顔・耳・足・しっぽに色がつく「ポインテッド」の猫だ。これはどの団体の品種の基準でも共通で、CFAの基準にも「すべてのラグドールはポインテッド」とはっきり書いてある。

ポイントの色を決めているのは、メラニン(毛の色素)を作る酵素の遺伝子。ラグドールやシャムが持っているのは、この酵素が体温の高いところでは働きにくく、冷たいところでは働くタイプだ。英語の論文でも、胴体のような温かい場所では酵素の働きが落ち、耳・顔・足先・しっぽのような冷えやすい場所で色が出る、と説明されている。

この色になるには、その遺伝子を両親から1本ずつ、合わせて2本受け継ぐ必要がある。1本だけなら見た目には出ない。

要するに、ラグドールの毛色は体温マップみたいなものだ。冷えている場所ほど色が濃い。

子猫が白いのは、お母さんのおなかが温かいから

子猫はお母さんのおなかの中で、ずっと体温に包まれて育つ。だから色素がほぼ作られず、ほぼ白で生まれてくる。生まれて外の空気に触れると、体の端っこから冷えて、そこから色がつきはじめる。

ナショナルジオグラフィックの記事では、シャムの子猫は生後2週間ごろから変化が見えはじめると紹介されている。ラグドールも最初は耳の先や鼻のあたりがうっすら色づく程度で、「白い子猫」に見える時期がしばらく続く。

完成まで2〜3年。気の長い焼き上がり

ここがラグドールらしいところで、とにかく完成が遅い。

  • CFAの基準:毛と色が完成するのは3歳ごろ
  • CFAの品種紹介:毛の色が出そろうのは2歳、体が完成するのは4歳
  • CFAのミテッドの項:完全な色は2歳以降
  • GCCFの基準:完全に大人になるのは3〜4歳ごろのこともある

資料によって「2歳」「3歳」と幅があるので、ポイントの完成は2〜3年が目安と考えておくのがいい。体はそのあともしばらく育つ。

大人になっても、まだ焼ける

完成したらそこで終わり、でもない。CFAの基準には「ラグドールはふつう年齢とともに濃くなる」ので、年を取った猫の体の色が濃くなるのは大目に見る、という一文がある。

さらに温度の影響もある。ナショナルジオグラフィックの記事によると、手術などで毛を刈った部分は、生え変わるときに冷えやすいので一時的に濃い毛が生えてくることがある。時間がたてば元に戻ることもある。寒い季節や涼しい部屋で過ごす猫が、少し濃く見えるという話も同じ理屈だ。

時期 見た目の目安
生まれた直後 ほぼ真っ白
生後数週間〜数か月 耳・鼻先・しっぽがうっすら色づく
1〜2歳ごろ ポイントがはっきりしてくる
2〜3歳ごろ 色の完成の目安
3〜4歳ごろ 体の完成の目安
それ以降 年齢とともに体の色がやや濃くなることがある

※時期は目安。毛色や個体によってかなり差がある。

判定

判定:本当。白い子猫が数年でこんがりするのは事実だ。ただし詐欺ではない。体温で働きが変わる遺伝子による、れっきとした仕様である。

お店やブリーダーが色をごまかしたわけではなく、ラグドールとはそもそも「後から色が出る猫」なのだ。子猫の写真だけで「この子はこういう色の猫です」と完成形を決めつけるほうが無理がある。むしろ、2〜3年かけて焼き色が変わっていくのを見守れるのは、ポインテッドの猫ならではの特典と言える。ちなみに取材班は、焼き上がりを見守るついでにサイベリアンやメインクーンの子猫時代の写真までさかのぼって眺めるようになった。長毛の子猫は、どの子もだいたい毛玉である。

ちなみに目の色は、どの団体の基準でも青だけ。色が変わっていくのは毛のほうで、目は青のままだ。

飼い主向けメモ

  • 子猫の写真は月1回くらい、同じ場所・同じ光で撮っておくと、焼き上がりの記録として楽しい
  • 毛色の名前(シール・ブルーなど)は、成長で見た目が変わっても基本的には同じ。色の種類はトップの毛色図鑑で確認できる
  • 手術や治療で毛を刈った部分が濃く生えてきても、温度による一時的な変化のことが多い。ただし皮膚の赤み・かゆみ・脱毛を伴うなら動物病院に相談する
  • 季節によって毛の量や見た目も変わる。詳しくは夏毛と冬毛で別の猫になる問題へ
  • 色と一緒に体もじわじわ大きくなる。サイズの話はニャジラ番付で検証した

白い毛玉を注文したら、3年かけてトーストが届いた。返品は受け付けていないし、する人もいない。

取材班が見た資料

※性格や体の特徴には個体差があります。健康について気になるときは、動物病院に相談してください。

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